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和歌山大学 観光学部教授
吉田 道代
昭和61年卒

「無理してでも旅に出よう」
~観光を通し、世界を知る~

ー滝学園時代、どんな生徒でしたか。 森 顕子 氏  高校から入ったいわゆる「外普」組です。入学前に学校から勉強のプレッシャーをかけられてびびって帰宅部の人になってしまったし、始業前に実施される英単語・熟語の小テストや数学の追試に追われて、明るい高校生活を送る生徒という感じではありませんでした。成績のほうもそれほど、でしたね(笑)。暗記が苦手で、英語の小テストは毎回散々な結果でした。数学はどちらかといえば得意科目のつもりでしたが、定期試験では合格点に届かないことも多くて、数え切れないほど追試を受けました。朝のテストについてのいい思い出はありませんが、自分が教員になってみると、よくまあ滝の先生たちは、こんな手間のかかることをやってくれていたものだという気持ちになります。大変な労力ですよね。同級生の女子生徒は、数は少なかったのですが色々な人がいて刺激的でした。どうしてそんなにできちゃうの?と思うような全科目成績優秀な人たちがいましたし、他にも仏像が好きな人とか、小説を書いている人とか、漫画に登場するドイツ人のキャラクターに憧れて大学でドイツ語を勉強することに決めた人とか、本当に個性豊かでした。通学では国鉄の高山線と名鉄線を乗り継いでいました。乗り換えの鵜沼駅での接続が悪く、待ち時間が長かったのですが、この駅で降りる同級生がよく付き合ってくれていました。何もない駅で高山線の列車が来るまで一緒にいてくれたことに、感謝しています。当時の友人たちとは今も交流がありますが、若かりし日の黒歴史には触れないでいてくれるので、ありがたいです(笑)。

お茶の水女子大学に在学中、地理学を学ばれましたが、どんなきっかけで地理学を専攻されたのでしょうか。
また大学時代は、どんな生活でしたか。
 私が受験した当時のお茶の水女子大学では、学部だけでなく学科も事前に選択する必要がありました。滝高校では地理の授業はなかったのですが、中学生の時には地理が好きでしたし、学科のカリキュラムにある巡検とよばれる研修旅行も面白そうと思って、志望しました。でも入学してみると、大学で学ぶ地理学は自分が想像していたものと違っていて、なかなか関心が持てずにいました。将来についての方向性も定まらずに焦ってしまい、かなり迷走しました。
 学術の世界に興味を持つようになったのは、大学3年生になってからです。当時は八王子セミナーハウスで大学教員を講師にしたセミナーが多く開催されていましたので、何度か社会学系のセッションに参加しました。そこで知り合った教員の誘いで研究所のアルバイトをしたり、他大学の学生が立ち上げた勉強会に入れてもらったりしてました。あと、クレヨンハウスという子ども向けの本を専門に扱う書店が青山にあって(2022年に武蔵野市に移転)、その研究所で資料作成のアルバイトをしていたこともあります。そこに通っていると社会問題を考えるためのイベントの情報も入ってくるので、セクシュアリティや性差別をテーマにした海外のドキュメンタリー映画の上映会にもよく行きました。そうした活動を通じて視野が広がりましたし、徐々にですが自分のしたいこともはっきりしていったように思います。研究職をめざすようになって修士課程に進むことにしましたが、地理学専攻にするかどうかについてはまだ迷っていました。指導教員から、地理学のテーマやアプローチの幅広さを教えてもらい、私の興味関心とつなげられるということがわかり、地理学を続けることに決めました。修士課程を終えて博士課程への進学を考えていた時に、別の教員から勧められてオーストラリアの大学に留学しました。日本を発つ時には、高校の時の同級生2人が空港で見送ってくれましたよ。オーストラリアで博士の学位を取るのにずいぶん時間がかかってしまいましたが、無事に日本で就職することができ、今に至ります。

現在、観光学部で教鞭をとっていらっしゃいますが、観光学部で学ぶことは何でしょうか。
地理学、経済学、社会学、人類学、国際関係学などの見地から世界の民俗学、都市問題、観光行動、ホスピタリティについて研究されているように思えますが、実際のところは? 何か、マーケティングの研究にも思えて。
 地理学と同様、観光学にも様々な分野があり、自分の学びたいテーマが見つけやすい学問だと思います。観光イコールマーケティングという見方が強いことは理解していますが、それだけではない研究がたくさんあります。例えば、SDGsは観光学においても重要な課題とされており、大学の講義では、環境破壊や経済格差といった問題、そして社会の周辺的な立場におかれるような人々に目を向けることの重要性を説いています。マーケティングの観点からは見落とされがちなテーマですが、関心を持つ学生は多いです。

「デジタルゲームファンのツーリズム」の研究、面白い切り口ですね。  私自身はパソコンやスマホでゲームをすることはありませんが、刀剣を擬人化したキャラクターが出てくる刀剣乱舞というデジタルゲームに注目していました。このゲームの愛好者の中には、刀剣にキャラクターの魂のようなものが宿っていると感じる人が多いようで、刀剣の展示会に行くことをあたかも実在の人物に会いに行くかのように言うのが面白いなと思っていました。ゼミの研究プロジェクトで、学生がこのゲームのプレイヤーを対象に調査をしたこともあります。昨年(2023年)は、その結果を学生と共同で「デジタルゲームファンのツーリズム ―刀剣乱舞プレイヤーの観光行動と動機」という資料にまとめました。このように、興味がわいたテーマについては自分の専門領域でなくても取り組みますし、学生と一緒に調査や学会での発表をすることもあります。


「ツーリズムEXPOジャパン2023 大阪・関西」の
和歌山大学のブースにて

「世界最大級の旅の祭典」をうたう「ツーリズムEXPOジャパン」には、和歌山大学観光学部・観光学研究科のブースも設置しています。(2023年10月27日撮影)

スペイン大西洋岸のフィステーラ岬にて

サンティアゴ巡礼路の最終地点を示す道標と共に。ガリシアの巡礼路はサンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂を目的地としますが、さらに西にあるフィステーラ岬を本当の終着地して多くの人が訪れます。
そのため、ここの道標は目的地までの距離を0キロとしています。(2023年4月6日撮影)

趣味は、何でしょうか。何か今はまっていることはありますか。  両親とも他界して気持ちが沈む中で、寺社巡りを始めました。これが自分に合っていたようで、趣味といえるかわかりませんが、今はまっています。これまでに西国三十三所を二巡し、コロナ禍で居住県内に留まることが求められた時期には、熊野本宮に向かう古道の中辺路コース、九度山から高野山金剛峯寺につながる参詣道をそれぞれ歩きました。2023年には、熊野古道と姉妹道提携を結んでいるスペイン・ガリシア地方の巡礼路も歩きました。これは、サンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂に向かう「フランスの道」と呼ばれるルートのラスト114kmです。菜の花が咲く村々を巡りながら、6日間かけて目的地にたどり着きました。自然豊かな場所を歩くのはよい気分転換になりますし、訪問先の寺社や教会について調べることで、その地域の歴史や文化に対する理解を深めることもできます。

座右の銘は。  「無理してでも旅に出よう」です。『人生はニャンとかなる!』(水野敬也・長沼直樹著、文響社、2013年刊)という本にある言葉ですが(笑)、ここ10年くらい自分がやってきたことがまさにこれです。旅行の価値は、出かけている間の経験だけでなく、計画段階で気分の高揚を味わえることや、終わってから何度でも思い出して楽しめるというところにあります。海外旅行となると、お金もかかるしちょっと面倒だな、と感じることもありますが、そんな時にこの言葉が頭に浮かんできます。

滝学園の在校生、卒業生(二十歳代の若手)に対し、今後の進路を決めていくうえ、さらには、生きていくうえでの助言がありましたら。  あまりいい助言が思いつかないのですが、海外に行くことは強くお勧めしたいです。大学生には、短期でもいいので外国で生活してみてほしいですね。海外に行くことを通じて何を達成するかまで考えて計画を立てるのがベストですが、単純に経験してみるだけでも得るものはあると思います。単身での外国暮らしは、ちょっとした「異世界転生」の体験です。外国語を使い、新しい人間関係を作り、なじみのない習慣を身につけていく中で、別人格が作られていく感じです。日本の文化や社会についても、今まであたり前と思っていたことに疑問を持ったり、逆によさに気づいたりします。このように相対的に見られるようになることで、より幅広い考え方ができるようになるんじゃないでしょうか。滞在期間が短くて語学力がそれほど伸びなかったとしても、帰国後には学習のモチベーションが高まっているはずです。最近は外国に行く費用がますます高額になっていますが、政府や民間による学生向けの助成金や大学の交換留学制度もあります。ただ、条件のよい助成金や交換留学先は競争率が高いので、早めに情報収集して、うまく活用してくださいね。

Profile

吉田 道代よしだ みちよ

国立大学法人 和歌山大学 観光学部教授
(専門:社会地理学)
吉田 道代さん
  • 1967年岐阜県生まれ
  • 1990年3月お茶の水女子大学 文教育学部 地理学科卒業
  • 1992年3月お茶の水女子大学 人文科学研究科 修士課程修了
  • 2002年3月南オーストラリア州フリンダース大学 社会科学研究科
    人文地理学 博士課程修了(2003年3月 博士号取得)
  • 2003年4月摂南大学国際言語文化学部/外国語学部 講師
  • 2013年4月摂南大学外国語学部 准教授
  • 2014年4月和歌山大学観光学部 教授(現任)


●主な著書
Women, Citizenship and Migration: The Resettlement of Vietnamese Refugees in Australia and Japan
『オーストラリアと日本の市民権-ベトナム難民女性の再定住の経験から』
著者:吉田道代
出版社:ナカニシヤ出版(2011年3月刊)
ISBN-13: 978-4779505348

『ホスピタリティ入門』
著者:青木義英, 神田孝治, 吉田道代(編集・分担執筆)
出版社:新曜社(2013年4月刊)
ISBN-13: 978-4788513366

『世界と日本の移民エスニック集団とホスト社会-日本社会の多文化化に向けたエスニック・コンフリクト研究』
著者:荒又美陽・大石太郎・加賀美雅弘・片岡博美・根田克彦・福本拓・矢ケ﨑典隆・山下清海・吉田道代(分担執筆)
出版社:明石書店(2016年3月刊)
ISBN-13: 978-4750343242

和歌山大学オフィシャルサイト https://www.wakayama-u.ac.jp/
※プロフィールは、取材日(2024年3月22日)時点の内容を記載しています。

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